好きな演奏家


ヨハン・セバスティアン・バッハ
Johann Sebastian Bach
(1685-1750)



カール・リヒター(Karl Richter, 1926-1981, ドイツ)

カール・リヒター(Karl Richter) カール・リヒター(Karl Richter)
カール・リヒターは、私のバッハ体験の最初の演奏家であっただけに、私にとってカール・リヒターと言えばバッハと同義です。 バッハはライプツィヒの聖トーマス教会でカントルの職を最後の27年間(1723-1750)勤めていますが、 リヒターも聖トーマス教会のオルガニストに就任(1949年23歳)しています。 その後、カントル職の打診がありましたが、すでに活動の場をミュンヘンに移していたリヒターはその話を断ってしまいました。
昭和44年(1969年)にリヒターが来日した時、都合で行けなくなったという知人から幸運にも「ゴルトベルク変奏曲」のチケットを譲ってもらうことができ、4月27日、日生劇場まで飛ぶようにして“見に行った”ことを昨日のことのように思い出します。 演奏が終わって笑顔でお辞儀する姿がいまだに目に浮かびます。 実は写真で見ていたリヒターは若くて痩せ型のスマートな姿だったのに、実際はけっこうふっくらして、お腹もやや出ていたことが印象的でした。会場で購入した分厚いコンサートガイドブックは今も大切に持っています。
私はリヒターの演奏に、バッハの音楽に普遍性を感じるのと同様、普遍性のようなものを感じ、もしかしたらバッハの再誕ではないのかと錯覚してしまいます。 同じ公演を聴いたチェンバロ奏者の小林道雄氏はリヒターについて「カール・リヒターがバッハを演奏しているのではなく、バッハがリヒターを選んだと言える」とまで絶賛していたことを『カール・リヒター論』(下記参照)で知り、私がリヒターに感じていたことと同じことを小林氏も感じていたのかと、嬉しくなってしまいました。 なお、アメリカが1977年に宇宙の彼方へ飛ばしたボイジャー探査機には地球上の音楽を集めた90分のゴールデンレコードが搭載されていますが、そのトップに、カール・リヒター指揮ミュンヘン・バッハ管弦楽団のブランデンブルク協奏曲第2番第1楽章が収録されています。(→Wikipedia、→NASA/THE GOLDEN RECORD、→NASA/Music From Earth
リヒターで持っているレコード/CDは、マタイ受難曲(1958年録音、3CD)、ヨハネ受難曲(1964年録音、2CD)、ミサ曲ロ短調(1961年録音、2CD)、クリスマス・オラトリオ(1965年録音、3CD)、カンタータ選集(4CD)、管弦楽組曲(1960-1961年録音)、音楽の捧げ物(1963年録音)、ブランデンブルク協奏曲(1967年録音)、ゴルトベルク変奏曲(1969年録音/日生劇場、1979年録音/石橋メモリアルホール)、オルガン・リサイタル(聖イエスボー教会オルガン)など。

<カール・リヒターの演奏によるJ.S.バッハの四大宗教曲CD>
J.S.バッハの四大宗教曲
J.S.バッハの四大宗教曲
J.S.バッハの四大宗教曲
J.S.バッハの四大宗教曲
J.S.バッハの四大宗教曲
J.S.バッハの四大宗教曲
<関連書籍>
『カール・リヒター論』(野中裕著・春秋社・2010年11月20日刊・初版)
カール・リヒターファンには堪えられない一書。まるで私のリヒターへの想いを代弁してもらっているかのような快感を覚えつつ、一気に読み終えた。本書はリヒターが演奏するバッハの作品を追いながら、リヒターのバッハ解釈について分析することが中心となっている。また前述したとおり私も聴きに行った1969年のリヒター来日時の詳細な記録などもあって内容はとても充実している。本書からは、野中氏のリヒターへの想いがよく伝わってくる。なお、巻末のリヒターの全録音、全映像のディスコグラフィーは資料的価値がきわめて高いと思う。(2012/1/4)
『マタイ受難曲』(磯山雅著・東京書籍・1994年10月31日刊・初版第11刷)
本書は、作品研究書として、受難曲の歴史から紐解き、マタイ受難曲の一曲一曲を詳細に解説した専門書である。昨年(2011年)11月に磯山氏のマタイ受難曲についての講演を聞かせていただいたがとても温厚な方で、私とほぼ同じ世代でもあることからとても親近感が持てた。講演は楽曲を試聴しながら進められたのでとても理解しやすかった。試聴が終えると「やっぱりマタイはいいですねえ」としみじみ仰っていた。最後に「私の40代はマタイ、60代はロ短調に費やしました」と仰っていただけに、本書は600ページ近い大作となっている。(2012/1/4)


グレン・グールド(Glenn Gould, 1932-1982, カナダ)

グレン・グールド(Glenn Gould) グレン・グールド(Glenn Gould)
グレン・グールドは独特のバッハ解釈で大きな存在感を示す鍵盤奏者ですが、彼を知ったのもやはり「レコード芸術」のレコード評でした。 私はドイツリートやピアノソナタに夢中になっていた頃、ピアノに魅了されて生のピアノの音が身近に欲しくて、ついに弾けないのも構わずに渋谷の河合ショップに出かけて行ってピアノ(KAWAI K-36)を買ってしまいました。 ピアノの光沢、白鍵と黒鍵の美しい組み合わせ、鍵盤を覆う赤いカバーに惚れ惚れとしたものです。 でもせっかく買ったのだからと、しばらくピアノ教室に通ってバイエルだけは卒業しました。 そのうち1曲だけでもバッハが弾けるようになりたいとの思いが強まり、バッハの「インヴェンション」の楽譜を買い込んで「二声のインヴェンション第1番」にひとり挑戦しました。 左手と右手を一小節ずつ練習して、どうにか見開き2ページの楽譜の最後までたどり着きました。もちろん、自己満足の世界でしたが、とても楽しい体験でした。 その時参考に買ったレコードが、ヴァルヒャのチェンバロによる「インヴェンション」です。 その後「レコード芸術」などで評価の高かったグレン・グールドのピアノによる「インヴェンション」が出て、さっそく手に入れて聴いてみると、その切れ味の良いピアノタッチに、たちまちグールド・ファンになってしまいました。 その時のピアノは子供が習う時にも大いに活躍しましたが、234kgという重さを少々持て余し、その後クラビノーバに買い替えました。いまは私の部屋で眠っています。 グールドが演奏するバッハでは、1955年録音のデビュー盤「ゴールドベルク変奏曲」が最も好きですが、1959年6月にニューヨークのコロンビアスタジオで27歳の時に録音したイタリア協奏曲(→グレン・グールド、イタリア協奏曲録音風景1グレン・グールド、イタリア協奏曲録音風景2)もなかなか聴き応えがあります。 レコード/CDは、ゴールドベルク変奏曲(1955年モノラル録音、デビュー盤)、イタリア協奏曲(1959年録音)、フーガの技法(1962年録音)、二声のインヴェンション、三声のインヴェンション、マルチェルロの主題による協奏曲などが入った未完のイタリアン・アルバム、トルコ行進曲を含むモーツァルト・ピアノソナタ集、ベートーヴェン・後期ピアノソナタなど。

<グレン・グールド ニューヨーク・コロンビア・スタジオでのイタリア協奏曲録音風景>
ニューヨーク・コロンビア・スタジオでのイタリア協奏曲録音風景
ニューヨーク・コロンビア・スタジオでのイタリア協奏曲録音風景
ニューヨーク・コロンビア・スタジオでのイタリア協奏曲録音風景
ニューヨーク・コロンビア・スタジオでのイタリア協奏曲録音風景